栄養コンシェルジュ新着情報:日本の食料自給率が過去最低37%に|私たちの食事とコメ、食料安全保障の関係を考える
2026年8月8日
「日本の食料自給率は37%」このニュースを見て、あなたはどのように感じましたか?
「日本では食べ物の37%しか作れていない?」
「残りの63%はすべて輸入?」
「もっと国産食品を食べたほうがいい?」
実は、どれも「37%」という数字だけでは答えられません。
農林水産省が公表した2025年度(令和7年度)の日本の食料自給率は、カロリーベースで37%。前年度から1ポイント低下しました。
一方、生産額ベースでは66%です。
同じ日本の食料なのに、なぜ「37%」と「66%」という2つの数字が存在するのでしょうか。
そして今回、自給率が低下した背景として注目したいのが、私たちにも身近な「コメ」です。
食料自給率は、農家や農業政策だけの話ではありません。
毎日の「何を食べるか」ともつながっています。
CHECK|「食料自給率37%」を正しく説明できますか?
まずは、次の5問をチェックしてみてください。
□ 食料自給率37%が何を意味するか説明できる
□ 37%と66%、2つの食料自給率の違いが分かる
□ なぜコメの消費量が減ると自給率が下がるのか説明できる
□ 国産の肉でも輸入飼料が自給率に関係することを知っている
□ 食料自給率と食料安全保障の違いを説明できる
いくつ分かりましたか?
「食料自給率37%」という数字を知っていることと、その意味を理解していることは違います。
栄養についても同じです。
カロリーや栄養素の数字を覚えるだけではなく、「その数字は何を表しているのか」まで理解することが大切です。
ここから、日本の食卓を少し違った角度から見てみましょう。
スーパーには、これだけ食べ物があるのに
スーパーへ行けば、コメ、パン、肉、魚、野菜、果物など、多くの食品が並んでいます。
海外から輸入された食品も珍しくありません。
季節を問わず多様な食品を選択できる現在の日本では、日常生活の中で「食料が足りない」と感じる機会はそれほど多くないかもしれません。
そのため、「日本のカロリーベース食料自給率は37%」と聞いても、実感が湧きにくい数字ではないでしょうか。
そもそも食料自給率とは、国内の食料供給に対して国内生産がどの程度を占めているかを示す指標です。
その中でもカロリーベース食料自給率は、国民に供給される熱量に対して、国内生産由来の熱量がどの程度を占めるかを示します。
つまり37%は、スーパーに並んでいる食品100個のうち37個が国産、という意味ではありません。
ここを理解すると、今回のニュースの見え方が変わってきます。
「37%」と「66%」は、どちらも正しい
2025年度の食料自給率は、
カロリーベース 37%
生産額ベース 66%
でした。
なぜ、これほど違うのでしょうか。
理由は「ものさし」が違うからです。
カロリーベースは、食品から供給されるエネルギー量を基準にします。
一方、生産額ベースは、食品の経済的価値を基準にします。
そのため、エネルギー供給量への影響が大きい穀類や油脂類と、単位重量当たりの価格が比較的高い野菜や畜産物などでは、それぞれの指標への影響が異なります。
つまり、「37%と66%、どちらが本当?」ではなく、「何を基準に日本の食料供給を見るのか」によって数字が変わるのです。
これは栄養情報を見るときにも非常に重要な考え方です。
数字を見る。その次に、「この数字は何を測った数字なのか?」まで確認する。
数字を正しく使うための基本です。
今回の37%には「コメ」が関係している
今回の低下で注目したいのが、日本人にとって非常に身近な食品であるコメです。
農林水産省は、2025年度のカロリーベース食料自給率について、国産供給熱量が減少したことで前年度から1ポイント低下し、37%になったと説明しています。
特に、米の消費量減少と民間在庫量の増加が影響しました。
なぜコメの消費量が、日本全体の食料自給率に影響するのでしょうか。
コメは、日本国内で高い自給率を維持している主要なエネルギー源です。
農林水産省も、米について「国内で唯一自給可能な穀物」であり、総供給熱量の約2割を占めると説明しています。
つまり、国内生産でまかなえるコメから摂取するエネルギーが減少すると、カロリーベースで見た国産の割合も低下しやすくなります。
私たちが何を食べるかによって、日本の食料自給率も変わる。
食料自給率は、生産する側だけで決まる数字ではないのです。
日本人の食生活の変化と食料自給率
日本の食料自給率を長期的に見ると、食生活の変化との関係が見えてきます。
農林水産省によると、日本の食料自給率は、米の消費が減少する一方、畜産物や油脂類の消費が増えるなどの食生活の変化によって長期的に低下してきました。2000年代以降は、おおむね横ばいで推移しています。
ここで、「昔の食生活のほうが良かった」と単純に結論づける必要はありません。
現在の日本では、多様な食品を選べるようになりました。
海外からの輸入によって、日本国内では生産しにくい食品を利用することもできます。
食文化も広がりました。
一方で、私たちが日常的に食べている食品の中には、原料や飼料などを海外へ依存しているものも多くあります。
食生活の多様化と食料自給率。
どちらかを「良い・悪い」で判断するのではなく、両者がどのようにつながっているのかを知ることが大切です。
「国産の肉」でも食料自給率が低くなる?
ここで、もう一つ興味深いポイントがあります。
例えば、日本国内で育てられた牛や豚、鶏。
「国産なのだから、自給率にもすべて国産として反映される」
と思うかもしれません。
しかし、カロリーベースの総合食料自給率では、輸入飼料を使って国内で生産された畜産物について、その輸入飼料に相当する部分は国産には算入されません。
つまり、「国内で生産された」ことと、「国内の資源だけで生産された」ことは同じではないということです。
この違いを見るために、農林水産省では「食料国産率」という別の指標も公表しています。
食料国産率では、飼料が国産か輸入かにかかわらず、国内で生産された畜産物を国内生産として評価します。
一つの食品の背景には、
生産地。
原材料。
飼料。
肥料。
エネルギー。
物流。
さまざまな要素があります。
普段何気なく見ている「国産」という表示から、さらに一歩奥へ。
食について学ぶと、食卓の向こう側まで見えてきます。
食料自給率が低いと何が起こる?
食料を海外から輸入すること自体が悪いわけではありません。
輸入によって、私たちは多様な食品を利用できます。
しかし、海外への依存度が高ければ、国外で起こる変化の影響を受けやすくなります。
例えば、主要生産国での異常気象、紛争、輸出規制、国際物流の混乱などです。
農林水産省も、日本は食料の大半を海外に依存していることから、コメ、小麦、とうもろこし、大豆など主要穀物を中心に、世界の需給や価格動向を継続的に把握しています。
これが食料安全保障を考える理由の一つです。
ただし、「自給率が37%だから、日本はすぐに食べられなくなる」という意味ではありません。
食料安全保障を考えるには、食料自給率だけでなく、
国内の生産能力。
農地。
農業従事者。
備蓄。
輸入先。
物流。
国際市場。
など複数の要素を見る必要があります。
農林水産省も、食料の安定供給確保には食料自給率とともに、国内農林水産業が持つ潜在的な生産能力を示す「食料自給力」の維持・向上が必要としています。
では、私たちはコメをもっと食べればいい?
今回のニュースを見ると、「それなら、日本人はもっとコメを食べればいいのでは?」と思うかもしれません。
確かに、国内自給率の高い国産米の消費は、カロリーベース食料自給率を考えるうえで重要です。
しかし、栄養の観点では、ここでも一つの答えだけにしないことが大切です。
必要なエネルギー量や主食量は、
年齢。
体格。
身体活動量。
健康状態。
スポーツの競技特性。
目的。
などによって異なります。
食料自給率を上げるために、すべての人が一律にコメをたくさん食べればよいわけではありません。
社会全体として国産食品をどう支えるかという視点と、一人ひとりに必要な栄養を考える視点は、分けながら同時に持つ必要があります。
この「一つの情報を一方向からだけ見ない」という考え方は、栄養を学ぶうえでも重要です。
食料自給率37%は「食育」の教材になる
食育というと、
「野菜を食べましょう」
「朝ごはんを食べましょう」
「好き嫌いをなくしましょう」
といった話をイメージするかもしれません。
しかし、食について学ぶことは、それだけではありません。
目の前にあるコメは、誰がつくったのか。
肉を育てるための飼料はどこから来たのか。
なぜスーパーでは一年中さまざまな食品を買えるのか。
日本の食文化はどのように変化してきたのか。
世界で何かが起きると、なぜ食品価格が変わるのか。
こうした疑問も、すべて「食」につながっています。
食料自給率37%という数字は、私たちが毎日食べているものの背景を知るための入口になります。
食事を「栄養素」だけで見るのではなく、生産、文化、社会まで含めて考える。
それも、これからの食育に必要な視点ではないでしょうか。
食べ物に「良い・悪い」をつける前に
栄養情報では、
「これは身体に良い食品」
「これは食べてはいけない食品」
といった分かりやすい表現が注目されがちです。
食料自給率の話でも、
「国産=良い」
「輸入=悪い」
という単純な構図にすると理解しやすくなります。
しかし、現実の食生活はそれほど単純ではありません。
食品には、
栄養的な役割。
価格。
供給量。
食文化。
嗜好。
保存性。
生産環境。
さまざまな側面があります。
だからこそ、栄養コンシェルジュ®では、食品を単純な善悪で判断するのではなく、**「誰が、何のために、どのように選ぶのか」**を考えることを大切にしています。
一つの数字。
一つの食品。
一つの研究。
そこだけを切り取らず、背景まで理解する。
食料自給率のニュースからも、栄養情報との向き合い方を学ぶことができます。
AI時代、「答えを知る」から「意味を説明する」へ
今はAIに、「日本の食料自給率は?」と質問すれば、「37%」という答えをすぐに得ることができます。
では、
「なぜ37%なの?」
「37%と66%は何が違うの?」
「なぜコメを食べなくなると下がるの?」
「国産肉なのに、なぜ輸入飼料が関係するの?」
と聞かれたらどうでしょう。
数字を検索できることと、その数字を理解していることは違います。
これは栄養情報も同じです。
「この食品は何kcal?」
「たんぱく質は何g?」
という数字は簡単に調べられます。
これから必要になるのは、その先です。
なぜその数字を見るのか。
身体では何が起こるのか。
目の前の人にはどう使うのか。
AIによって情報を得やすくなったからこそ、「知っている人」ではなく、理解し、判断し、分かりやすく伝えられる人の価値が高まります。
結論|食料自給率37%から見える「日本の食卓」
2025年度の日本のカロリーベース食料自給率は37%となり、前年度から1ポイント低下しました。
農林水産省は、国産供給熱量が減少し、特に米の消費量減少などが影響したとしています。
一方、生産額ベース食料自給率は66%です。
カロリーベース自給率は、食品の重量割合ではなく、国内に供給される食料エネルギーに占める国産の割合を示します。
また、畜産物では輸入飼料の影響も反映されるため、「国産食品の割合」と単純に置き換えることはできません。
食料自給率は、日本が何を生産しているかだけでなく、私たちが「何を食べているか」ともつながる数字です。
37%という数字をきっかけに、毎日の食卓がどのように成り立っているのかを考えてみることも、大切な食育の一つです。
毎日食べるものだからこそ、栄養を一生使える知識に
私たちは、一生を通して食べ続けます。
だからこそ、栄養学は特別な職業の人だけに必要な知識ではありません。
自分自身の健康。
家族の食事。
子どもの成長。
スポーツ。
美容。
高齢期の健康。
そして今回のような食料問題。
「食べること」を深く知ると、日常生活の見え方まで変わってきます。
栄養コンシェルジュ®では、単に「この食品を食べましょう」と覚えるのではなく、消化吸収、代謝、身体組成など身体の仕組みから栄養を体系的に学びます。
そして、食品カテゴリーマップ®などを活用しながら、数多く存在する食品を整理し、目的に応じた食品選択へつなげていきます。
栄養情報を検索すれば、たくさんの「答え」が見つかる時代になりました。
だからこそ、「なぜ?」を説明できる栄養学を。
食料自給率37%という一つのニュースから、コメ、食品、農業、食料安全保障、食育までつながっていくように、栄養学を学ぶと、一つひとつの食事の背景が見えるようになります。
栄養を知識として覚えるだけではなく、自分や大切な人、そして仕事で関わる人のために使える力へ。
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参考資料
農林水産省.日本の食料自給率.令和7年度食料自給率.
農林水産省.食料自給率とは.総合食料自給率・品目別自給率・食料国産率.
農林水産省.食料自給率・食料自給力について.
農林水産省.米の消費拡大について.2026.
農林水産省.食料・農業・農村基本計画.2025年4月11日閣議決定.
農林水産省.食料安全保障月報.
※本記事は2026年8月8日時点で農林水産省が公表している情報を中心に構成しています。食料自給率は複数の算定方法があるため、37%という数字のみで日本の食料供給能力や食料安全保障全体を評価することはできません。
一般社団法人 日本栄養コンシェルジュ協会
「栄養で人と未来を輝かせる」を理念に、科学的・医学的根拠に基づいた栄養知識の普及と、現場で活用できる実践的スキルを持つ人材の育成に取り組むヘルスケア教育機関です。 また、医療・運動・心理・生活科学など多分野の知見を統合し、本質的な健康支援を実現するための「栄養哲学」の研究にも取り組んでいます。 認定資格「栄養コンシェルジュ®」は、医療従事者やアスリートなど多分野の専門家が監修した信頼性の高い栄養学資格で、基礎から応用まで体系的に学べるカリキュラムを提供しています。 さらに資格取得後も、最新の研究情報の共有や学習機会の提供を通じて継続的な学びを支援し、資格取得者の生涯学習と専門性向上をサポートしています。
FAQ|2025年度の食料自給率・日本の食料安全保障
Q1.2025年度の日本の食料自給率37%は、過去最低なのですか?
はい。2025年度のカロリーベース食料自給率は37%で、過去にも同率の年度はありましたが、小数点以下まで比較すると過去最低となりました。政府は2030年度に45%まで引き上げる目標を掲げています。
Q2.食料自給率37%ということは、日本は食料の63%を輸入しているのですか?
いいえ。37%は食品の重量や個数ではなく、国内に供給される食料エネルギーのうち、国産由来の熱量が占める割合です。したがって「食料の63%が輸入」という意味ではありません。
Q3.なぜコメの消費量が減ると、日本の食料自給率も下がるのですか?
コメは国内自給率が非常に高く、日本の供給熱量を支える主要な食品だからです。国産米から得られるエネルギー量が減ると、総供給熱量に占める国産割合も低下し、カロリーベース食料自給率が下がりやすくなります。
Q4.日本の食料自給率が低いと、すぐに食料不足になるのでしょうか?
食料自給率が37%だからといって、直ちに食料不足になるわけではありません。ただし、海外依存度が高いほど、紛争、異常気象、輸出規制、物流障害、為替変動などの影響を受けやすくなるため、食料安全保障を考える重要な指標の一つです。
Q5.国産食品を選ぶことは、日本の食料自給率向上につながりますか?
国産農林水産物の消費拡大は、食料自給率向上を支える要素の一つです。ただし、自給率は消費だけでなく、農地、生産者、飼料、肥料、物流、輸入構造など多くの要因で決まるため、国産食品を選ぶだけで解決する問題ではありません。
FAQ|栄養コンシェルジュ®・食育・栄養資格
Q6.食料自給率や食料安全保障を学ぶことは、栄養学と関係がありますか?
関係があります。栄養は身体に必要な栄養素だけでなく、実際にどの食品を選び、どのように食生活へ取り入れるかまで考える学問です。食料自給率や食料安全保障を知ることは、食品の背景まで理解する食育にもつながります。
Q7.栄養コンシェルジュ®は、他の栄養資格と何が違うのですか?
大きな特徴は、特定の食品や食事法を覚えるのではなく、消化吸収、代謝、身体組成などを基盤に「なぜその食品を選ぶのか」を考える点です。対象者の目的や生活背景に合わせた実践的な栄養提案を重視しています。
Q8.食品カテゴリーマップ®を学ぶと、食料自給率のような社会的な食の問題にも役立ちますか?
食品カテゴリーマップ®は、食品を主な栄養学的役割から7カテゴリーに整理するツールです。食料自給率そのものを分析するものではありませんが、食品を善悪ではなく役割で捉える力が身につき、国産・輸入と栄養価を混同せず考える助けになります。
Q9.栄養コンシェルジュ®は、管理栄養士やトレーナーにも役立ちますか?
はい。既に専門資格を持つ方にとっても、栄養知識を身体の仕組みと結び付け、説明力や個別提案力を高める学びとして活用できます。国家資格を代替するものではなく、既存の専門性を補完する位置づけです。
Q10.AIで栄養や食料自給率を調べられる時代に、栄養コンシェルジュ®を学ぶ意味はありますか?
AIは数値や一般情報を提示できますが、その意味を理解し、目の前の人にどう使うかを判断するには専門性が必要です。栄養コンシェルジュ®では、情報を覚えるのではなく、根拠を理解して実践へ変える力を養います。


